(Pt:患者 / 頭医:頭痛専門医)
Pt:片頭痛のときに髪をとくだけでも痛く感じることがあるんですが、これって普通じゃないんですか?
頭医:それはね、“アロディニア(異痛症)”という状態かもしれません。本来なら痛くないはずの刺激――たとえば髪をとく、シャワーを浴びる、眼鏡をかけるといったことが、痛みや不快感として感じられる状態のことなんです。
Pt:えっ、そんな状態にも名前があるんですね?
頭医:はい。片頭痛の患者さんで注意深く聞くと、結構な割合で経験しているんです。これは “感作(sensitization)” という神経の過敏状態によって起きるんですよ。
◆感作には2種類あります:
- 末梢性感作:頭の表面の神経が敏感になる状態 → 拍動性の頭痛に関係
- 中枢性感作:脳の中枢(たとえば視床)が敏感になる状態 → 頭以外の場所(腕や足)でも痛みを感じる
Pt:なるほど…それをどうやって調べるんですか?
頭医:それにはこの質問票(ASC:Allodynia Symptom Checklist)を使います。たとえば、片頭痛がひどいときに、髪をとく・顔を洗う・メガネをかける・シャワーを浴びるといった日常の動作をしたときに、皮膚が痛んだり、不快に感じるかどうかをチェックしていくんです。
◆アロディニアの評価方法
- 質問は13項目あります
- 各項目ごとに「どのくらいの頻度で不快・痛みを感じたか」を評価
- 合計点に応じてアロディニアの重症度を判定:
アロディニアの程度 | ASCスコア範囲 |
なし | 0~2点 |
軽度 | 3~5点 |
中等度 | 6~8点 |
重度 | 9点以上 |
Pt:スコアが高いと、それだけ神経が敏感になってるってことですか?
頭医:そうです。そして、アロディニアが出現した後にトリプタン(片頭痛の薬)を使っても、効果が落ちるということが研究でわかっています(Bursteinら)。だから、痛みが強くなる前、アロディニアが出る前に治療を始めるのがすごく大事なんですよ。
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頭痛の駆け込み寺
頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする
●目的:
頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長くても5分程度しか割けない。そこで伝えきれない内容を補える専門医による情報発信の場をつくる。
それにより、わざわざ外来に訪れなくても解決できる内容や、ネット検索して誤った情報を得てしまう方に対して、安心して専門医の話を聞ける場所ともなる。
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※頭痛専門医とは?
日本頭痛学会が定めた申請資格(医師免許証・頭痛関連学会の専門医・5年以上の研修・頭痛関連疾患に関する発表など)を有し、資格審査および試験により認定された医師。
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●島田医師プロフィール
《経歴》
平成21年杏林大学 医学部卒業
杏林大学医学部付属病院 脳神経外科入局
都立神経病院
杏林大学医学部付属病院
都立多摩総合医療センター
水戸ブレインハートセンター
東京大学医学部 特別研究員
《学会・専門医》
日本脳神経外科学会 専門医、指導医
日本脳卒中学会 専門医、指導医
日本神経内視鏡学会 専門医
日本頭痛学会 専門医
日本医師会認定産業医
▶YouTube : https://www.youtube.com/@頭痛の駆け込み寺
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