(Pt:患者 / 頭医:頭痛専門医)
◆片頭痛の社会的・経済的影響
Pt:片頭痛って、自分がつらいだけじゃなくて、社会にも影響があるんですか?
頭医:そうなんです。片頭痛は労働損失の大きな原因の一つで、特に働き盛りの世代に多いから、社会全体に与える影響がとても大きいんですよ。会社を休む(アブセンティーイズム)だけじゃなくて、出勤していても集中できずに生産性が落ちる(プレゼンティーイズム)ことが、より深刻な問題なんです。
◆プレゼンティーイズムによる経済損失
Pt:プレゼンティーイズムって、実際どれくらい経済に影響があるんですか?
頭医:日本では、片頭痛によるプレゼンティーイズムだけで年間3,600億円〜2兆3,000億円の損失があると推定されています。欠勤よりも、“出勤していても働けない”ことによる損失のほうがずっと大きいんです。
◆直接損失と間接損失の違い
Pt:片頭痛による“損失”って、どういうものがあるんですか?
頭医:損失には2種類あります。
- 直接損失:病院の診察代、薬代などの医療費
- 間接損失:仕事の能率低下や休業による経済的な損失
特に片頭痛では、間接損失が圧倒的に大きいことが分かっています。
◆日本における片頭痛の経済的影響
Pt:日本では、どのくらい影響が出ているんですか?
頭医:例えば2018年の調査では、1日休業すると約26,000円、半日休業だと約10,000円の経済的損失が発生すると試算されています。片頭痛による年間の経済損失は最大で2兆円以上とされており、これは決して小さな問題ではありません。
◆慢性片頭痛のさらなる負担
Pt:慢性片頭痛になると、さらに大変そうですね…?
頭医:はい、慢性片頭痛の患者さんは、反復性の片頭痛患者と比べて3〜4倍の医療費がかかると言われています。さらに、労働損失も4倍以上になるという報告があって、プレゼンティーイズムや欠勤も増えるんです。
◆医療へのアクセスの課題
Pt:でも、みんな病院に行ってるわけじゃないんですよね?
頭医:その通りで、日本の片頭痛患者の約7割は医療機関を受診していないというデータがあります。
特に発作の頻度が高い人ほど、早めに専門的な治療を受けることで、日常生活や仕事への影響を減らすことができるんです。
◆社会全体での片頭痛対策の重要性
Pt:片頭痛って、もっと社会的にも注目されていい問題なんですね。
頭医:まさにその通りです。片頭痛は個人の苦しみだけでなく、社会全体にも大きな経済的影響を及ぼしています。だからこそ、適切な医療の提供や、職場での理解、早期の対処がとても大切なんです。
————————————–
頭痛の駆け込み寺
頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする
●目的:
頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長くても5分程度しか割けない。そこで伝えきれない内容を補える専門医による情報発信の場をつくる。
それにより、わざわざ外来に訪れなくても解決できる内容や、ネット検索して誤った情報を得てしまう方に対して、安心して専門医の話を聞ける場所ともなる。
**
※頭痛専門医とは?
日本頭痛学会が定めた申請資格(医師免許証・頭痛関連学会の専門医・5年以上の研修・頭痛関連疾患に関する発表など)を有し、資格審査および試験により認定された医師。
**
●島田医師プロフィール
《経歴》
平成21年杏林大学 医学部卒業
杏林大学医学部付属病院 脳神経外科入局
都立神経病院
杏林大学医学部付属病院
都立多摩総合医療センター
水戸ブレインハートセンター
東京大学医学部 特別研究員
《学会・専門医》
日本脳神経外科学会 専門医、指導医
日本脳卒中学会 専門医、指導医
日本神経内視鏡学会 専門医
日本頭痛学会 専門医
日本医師会認定産業医
▶YouTube : https://www.youtube.com/@頭痛の駆け込み寺
コメント