(Pt:患者 / 頭医:頭痛専門医)
Pt:頭痛の治療って、薬だけじゃなくて「教育」も大事って聞いたことがあるんですけど、本当ですか?
頭医:はい、そうなんです。頭痛の患者さんに正しい知識を伝える「患者教育」は、頭痛による生活への支障や困りごとを軽くし、治療への満足度を高める効果があります。
Pt:教育って、具体的にはどんなことをするんですか?
頭医:例えば、頭痛の原因や対処法をきちんと説明したり、頭痛ダイアリーのつけ方を教えたりします。これをトレーニングを受けたかかりつけ医や、教育用の資料を使った看護師でも行うことができて、実際に効果があるとされています。
Pt:なるほど。でも、ただ説明するだけじゃなくて、コミュニケーションの仕方も大事そうですね。
頭医:そのとおりです。診察では、診断や薬の話だけでなく、「自由形式の質問」や「質問―指示―質問法」といった標準的なコミュニケーション技法を使って、頭痛による日常生活の支障についても丁寧に話し合うことが大切です。
Pt:教育って、ちゃんと効果があるんでしょうか?
頭医:ありますよ。9つの臨床研究をまとめたメタアナリシスによると、6か月程度の中期的な教育で、頭痛の頻度、生活への支障(障害度)、QOL(生活の質)が改善したという報告があります。ただし、短期的な効果はあまり認められませんでした。
Pt:具体的にはどんな変化があるんですか?
頭医:例えば、急性期の薬をきちんと使えるようになったり、食生活や運動、リラックスの時間が増えたり、頭痛ダイアリーを継続してつけられるようになったりします。また、救急外来や予定外の診察が減る、頭痛のタイプについて理解が深まる、といった効果も報告されています。
Pt:教育って、専門医じゃないとできないんですか?
頭医:いえ、教育プログラムを受けたかかりつけ医や、CD-ROMやDVDを活用した看護師の教育でも、十分に効果が出ています。対象は大人だけでなく、思春期や小児を対象にした教育プログラムでも、頭痛の頻度や障害度が改善するという結果が出ています。
Pt:それはすごいですね。でも、患者と医師の間で治療に対する考え方のズレってあったりするんでしょうか?
頭医:実はあります。ある研究では、医師の66%が「痛みの軽減」を最も重視しているのに対して、患者さんの46%は「病気の説明」を最も大事だと感じていたんです。他にも、患者さんの中には、神経学的な検査や継続的な診療を希望している人もいて、医師が重要と考えていない部分を患者が重視していることがあるんです。
Pt:たしかに、説明ってすごく安心につながりますよね。
頭医:その通りです。実際に、慢性片頭痛の診察を録音して分析した研究では、多くの医師が「閉じた質問(はい・いいえで答える)」ばかりを使っていて、自由形式の質問や、日常生活の支障についての話がほとんどされていなかったことがわかっています。
Pt:それだと患者の悩みが伝わりにくそうですね。
頭医:ええ。別の研究では、診察中に日常生活への影響を具体的に聞いた医師は、患者を「重症」と評価する割合が増え、すぐに治療を勧めたり再診を促したりする率も上がったんです。つまり、患者の生活の中でどれだけ困っているかをきちんと聞くことが、より適切な診断と治療につながるということなんです。
Pt:診断や薬のことだけじゃなくて、患者の話をしっかり聞く姿勢が大切なんですね。
頭医:まさにそのとおりです。頭痛診療では、医師と患者の信頼関係、そしてしっかりとした患者教育がとても大切なんですよ。
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頭痛の駆け込み寺
頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする
●目的:
頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長くても5分程度しか割けない。そこで伝えきれない内容を補える専門医による情報発信の場をつくる。
それにより、わざわざ外来に訪れなくても解決できる内容や、ネット検索して誤った情報を得てしまう方に対して、安心して専門医の話を聞ける場所ともなる。
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※頭痛専門医とは?
日本頭痛学会が定めた申請資格(医師免許証・頭痛関連学会の専門医・5年以上の研修・頭痛関連疾患に関する発表など)を有し、資格審査および試験により認定された医師。
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●島田医師プロフィール
《経歴》
平成21年杏林大学 医学部卒業
杏林大学医学部付属病院 脳神経外科入局
都立神経病院
杏林大学医学部付属病院
都立多摩総合医療センター
水戸ブレインハートセンター
東京大学医学部 特別研究員
《学会・専門医》
日本脳神経外科学会 専門医、指導医
日本脳卒中学会 専門医、指導医
日本神経内視鏡学会 専門医
日本頭痛学会 専門医
日本医師会認定産業医
▶YouTube : https://www.youtube.com/@頭痛の駆け込み寺
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