A-23. 頭痛診療においてチーム医療は有用なの?

頭痛一般

(Pt:患者 / 頭医:頭痛専門医)


Pt:
難しい頭痛って、どうやって治療するんですか?

頭医:いい質問ですね。難治性の頭痛には、頭痛専門医を中心に、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、看護師、薬剤師、鍼灸師など、いろいろな専門職が協力する”チーム医療”がとても効果的だと考えられています。これを『集学的治療プログラム(MTP)』って呼ぶんですよ。

Pt:へぇ〜、そんなにたくさんの人が関わるんですね。どうしてそんな治療が必要なんですか?

頭医:慢性頭痛は、体の問題だけじゃなく、心のストレスや社会生活にも大きな影響を与える病気なんです。だから、色々な角度からサポートする必要があるんですね。

Pt:たとえば、どんなサポートがあるんですか?

頭医:たとえば、理学療法士は体のゆがみや筋肉の状態をチェックして、頭痛を悪化させる原因を取り除く治療をします。首や肩のコリが原因の頭痛には、運動療法も効果があるんですよ。

Pt:運動も大事なんですね。

頭医:そうです。さらに、臨床心理士はストレス管理や認知行動療法を行い、頭痛を自己管理できる力(自己効力感)を高めるお手伝いをします。ストレスが頭痛を悪化させるケースも多いので、とても大事なんです。

Pt:日本人と外国の人では、ストレスの感じ方とか違うんですか?

頭医:面白いところですね。実は、日本人とドイツ人を比べた研究では、感情の抑え方に違いはありましたが、頭痛の症状自体には大きな違いはなかったんです。だから、欧米で効果があった治療法は、日本でも有効と考えられています。

Pt:看護師さんも関わるんですか?

頭医:はい、頭痛専門の看護師が病歴を聞いたり、頭痛ダイアリーの管理を手伝ったり、治療をサポートしてくれます。特に薬の使いすぎによる頭痛(MOH)の治療では、看護師によるサポートが成功率を上げたという報告もありますよ。

Pt:鍼も効くんですか?

頭医鍼治療も片頭痛に効果があるという報告があるので、試してみる価値はありますね。

Pt:薬剤師さんも?

頭医:ええ、薬剤師は正しい薬の飲み方を教えてくれて、治療への満足度や効果を高める役割を持っています。

Pt:いろんな人が関わるんですねぇ。

頭医:そうですね。たとえば、埼玉国際頭痛センターでは、作業療法士も頭痛ダイアリーを分析して、患者さんと一緒に頭痛の傾向を探ります。さらに、栄養士や歯科医が加わることもあるんですよ。

Pt:すごいチームですね。でも、お金とか大変じゃないですか?

頭医:そこは課題です。どの治療が本当に必要で、どの組み合わせが一番いいか、そして経済的にどうか、まだ十分なデータはないので、これからの研究が大事ですね。

Pt:実際に効果は出てるんですか?

頭医:はい。たとえば、MOH患者さんへのMTPでは、1か月あたりの頭痛日数が大幅に減ったという報告もありますし、片頭痛患者さんでも、頭痛の頻度や強さが改善したという研究がたくさんあります。

Pt:それなら、もっと広まるといいですね。

頭医:本当にそう思います。今後は、こうしたチーム医療に対応できるコメディカル(補助専門職)の育成と、さらなる科学的な証拠(エビデンス)の蓄積が期待されています。

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頭痛の駆け込み寺

頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする

●目的:

頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長くても5分程度しか割けない。そこで伝えきれない内容を補える専門医による情報発信の場をつくる。

それにより、わざわざ外来に訪れなくても解決できる内容や、ネット検索して誤った情報を得てしまう方に対して、安心して専門医の話を聞ける場所ともなる。

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※頭痛専門医とは?

日本頭痛学会が定めた申請資格(医師免許証・頭痛関連学会の専門医・5年以上の研修・頭痛関連疾患に関する発表など)を有し、資格審査および試験により認定された医師。

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●島田医師プロフィール

《経歴》

平成21年杏林大学 医学部卒業
杏林大学医学部付属病院 脳神経外科入局
都立神経病院
杏林大学医学部付属病院
都立多摩総合医療センター
水戸ブレインハートセンター
東京大学医学部 特別研究員


《学会・専門医》

日本脳神経外科学会 専門医、指導医
日本脳卒中学会 専門医、指導医
日本神経内視鏡学会 専門医
日本頭痛学会 専門医
日本医師会認定産業医

▶YouTube : https://www.youtube.com/@頭痛の駆け込み寺

頭痛の駆け込み寺
YouTube企画 頭痛専門医 島田医師による 「頭痛の駆け込み寺」 ●内容: 頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする ●目的: 頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長...

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