(Pt:患者 / 頭医:頭痛専門医)
Pt:薬以外で頭痛を予防する方法ってあるんですか?
頭医:はい、ありますよ。最近では、認知行動療法と呼ばれる方法が、薬と同じくらい効果があることがわかってきました。薬と一緒に使うと、さらに効果が高まるんです。
Pt:認知行動療法って、どんなことをするんですか?
頭医:1990年代から頭痛に使われるようになっていて、いろいろなやり方があります。特に、リラクセーション法(ストレスマネジメントを含む)、バイオフィードバック療法、そして認知療法の組み合わせが使われてきました。単独で認知療法だけを行う例は少ないんですよ。
Pt:リラクセーションとかバイオフィードバックって、難しそうですね。
頭医:難しく考えなくて大丈夫です。リラックスする方法を身につけたり、自分の体の反応をモニターしながらコントロールする訓練をするんです。そして2010年代からは、マインドフルネスやACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)といった新しいスタイルの認知行動療法も登場しています。
Pt:マインドフルネスってよく聞きますね。
頭医:ええ。マインドフルネスは、“今起きていることに注意を向けて、それをそのまま受け入れる”という方法です。ACTも似ていて、苦痛を無理に取り除こうとせず受け入れることで、心の自由度を高める治療法です。
Pt:効果は本当にあるんですか?
頭医:はい。多くの研究やRCT(ランダム化比較試験)で、一次性頭痛に対する有効性が示されています。たとえば、緊張型頭痛では、認知行動療法がアミトリプチリンという薬と同じくらい効果があることが報告されていますし、片頭痛ではリラクセーションとバイオフィードバックの組み合わせが、プロプラノロールという予防薬と同等以上の効果を示しています。
Pt:薬を使わずにそこまで効果があるんですね!
頭医:そうなんです。さらに、認知行動療法と薬を併用すると、単独よりもさらに効果が高まることもわかっています。小児に対しても効果が高くて、子どもの場合、大人よりも効果が持続しやすいとも言われています。
Pt:子どもにもいいんですね。
頭医:ええ、それに、薬物療法と組み合わせることで、薬をきちんと続ける割合も上がることが報告されています。最近では、マインドフルネスやACTによる治療も盛んに研究されていて、自己効力感(自分でやれるという自信)が高まったり、ストレスへの対処力がついたり、頭痛に関連するQOL(生活の質)が改善されたりする効果も出てきています。
Pt:いいことずくめに聞こえますけど、デメリットはないんですか?
頭医:もちろん注意点もあります。行動療法は非薬物療法なので、副作用がほとんどなく、薬物依存の心配もないし、比較的安価ですが、一方で、治療方法が施設ごとに違ったり、治療者に一定の知識や技量が求められたり、すぐに効果が出ない場合があるという短所もあります。
Pt:なるほど。すぐには効果が出ないけど、根本的に改善したい人にはよさそうですね!
頭医:そのとおりです。焦らず続けることが大切ですね。
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頭痛の駆け込み寺
頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする
●目的:
頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長くても5分程度しか割けない。そこで伝えきれない内容を補える専門医による情報発信の場をつくる。
それにより、わざわざ外来に訪れなくても解決できる内容や、ネット検索して誤った情報を得てしまう方に対して、安心して専門医の話を聞ける場所ともなる。
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※頭痛専門医とは?
日本頭痛学会が定めた申請資格(医師免許証・頭痛関連学会の専門医・5年以上の研修・頭痛関連疾患に関する発表など)を有し、資格審査および試験により認定された医師。
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●島田医師プロフィール
《経歴》
平成21年杏林大学 医学部卒業
杏林大学医学部付属病院 脳神経外科入局
都立神経病院
杏林大学医学部付属病院
都立多摩総合医療センター
水戸ブレインハートセンター
東京大学医学部 特別研究員
《学会・専門医》
日本脳神経外科学会 専門医、指導医
日本脳卒中学会 専門医、指導医
日本神経内視鏡学会 専門医
日本頭痛学会 専門医
日本医師会認定産業医
▶YouTube : https://www.youtube.com/@頭痛の駆け込み寺
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