B-i-12. 詳しく 片頭痛の診断はどうするの?

片頭痛

(Pt:患者 / 頭医:頭痛専門医)

Pt:自分の頭痛が片頭痛かどうか簡単に調べる方法ってあるんですか?

頭医:はい、ありますよ。実は、いくつかの質問に答えるだけで、片頭痛の可能性を高い確率で見つけられるスクリーニングツールがあるんです。そのひとつが、Phillips先生の “3つの質問” です。

◆Phillips先生の3つの質問(Pryse-Phillipsら, 2002)

Pt:どんな質問なんですか?

頭医:次の3つです。

  1. 毎日頭痛がありますか?(→「いいえ」が片頭痛の可能性)
  2. 片側だけが痛みますか?
  3. 頭痛のせいで日常生活に支障が出ますか?

この3つすべてに「はい」と答えた場合、96%の確率で片頭痛である可能性が高いとされています。これは医学的には “陽性的中率が96%” 言います。

Pt:すごく当たるんですね!

頭医:そうですね。感度は0.86、特異度は0.73とされていて、スクリーニングツールとしてはかなり優秀です。ただし、あくまで簡易診断のためのチェックリストなので、これだけで確定診断するわけではありません。

◆もうひとつのツール:ID Migraine(Liptonら, 2003)

Pt:他にもありますか?

頭医:はい、もうひとつ有名なのが ID Migraine” というツールです。次の3つのうち、いくつ当てはまりますか?

  1. 頭痛のせいで日常生活に支障がありますか?
  2. 吐き気がありますか?
  3. 光がまぶしくてつらく感じますか?(光過敏)

このうち2つ以上当てはまれば、93%の確率で片頭痛の可能性があるとされています。感度0.81、特異度0.75と、これもとてもよくできたチェック方法ですね。

Pt:でも、こんなに当たるなら、もうこれで診断してもいいんじゃないですか?

頭医:そう思う人もいますが、これらは “スクリーニングツール” 、つまりふるい分けのための手段にすぎません。4~7%の人は誤って「片頭痛ではない」と判断されてしまう可能性があるんです。

◆正式な診断基準(前兆のない片頭痛)

Pt:じゃあ、正式な診断ってどうするんですか?

頭医:国際頭痛分類に基づく診断基準があります。まずは、4時間~3日間続く頭痛が5回以上あること。これが第一条件です。さらに、次の2つの項目に分かれていて、条件を満たす必要があります。

●項目①(以下のうち2つ以上)

  • 片側の痛み
  • ズキズキする拍動性の痛み
  • 中等度~重度の痛み
  • 歩いたり階段を上ったりすると悪化する

●項目②(以下のうち1つ以上)

  • 吐き気や嘔吐
  • 光や音に敏感(光過敏・音過敏)

頭医:これらの条件を満たせば、“前兆のない片頭痛”と診断できます。

Pt:なるほど…。でも、もしもっと頻繁に頭痛がある場合は?

頭医:その場合は注意が必要です。月に15日以上頭痛がある人は、“慢性片頭痛” や “薬物乱用頭痛” の可能性も考えます。そういう時は、専門の医師の診察が必要になりますね。

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頭痛の駆け込み寺

頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする

●目的:

頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長くても5分程度しか割けない。そこで伝えきれない内容を補える専門医による情報発信の場をつくる。

それにより、わざわざ外来に訪れなくても解決できる内容や、ネット検索して誤った情報を得てしまう方に対して、安心して専門医の話を聞ける場所ともなる。

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※頭痛専門医とは?

日本頭痛学会が定めた申請資格(医師免許証・頭痛関連学会の専門医・5年以上の研修・頭痛関連疾患に関する発表など)を有し、資格審査および試験により認定された医師。

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●島田医師プロフィール

《経歴》

平成21年杏林大学 医学部卒業
杏林大学医学部付属病院 脳神経外科入局
都立神経病院
杏林大学医学部付属病院
都立多摩総合医療センター
水戸ブレインハートセンター
東京大学医学部 特別研究員


《学会・専門医》

日本脳神経外科学会 専門医、指導医
日本脳卒中学会 専門医、指導医
日本神経内視鏡学会 専門医
日本頭痛学会 専門医
日本医師会認定産業医

▶YouTube : https://www.youtube.com/@頭痛の駆け込み寺

頭痛の駆け込み寺
YouTube企画 頭痛専門医 島田医師による 「頭痛の駆け込み寺」 ●内容: 頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする ●目的: 頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長...

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