B-i-26. 前庭性片頭痛って何?

片頭痛

(Pt:患者 / 頭医:頭痛専門医)

Pt最近「前庭性片頭痛」っていう言葉を聞いたんですけど、普通の片頭痛とは違うんですか?

頭医:はい、違う特徴があります。前庭性片頭痛は、めまいが主な症状として出る片頭痛の一種なんです。一般的な片頭痛といえば、ズキズキする頭の痛みをイメージしますよね。でも、前庭性片頭痛では、頭痛が出ないことも珍しくないんです。

Pt:えっ、頭痛が出ないのに片頭痛なんですか?

頭医:そうなんです。片頭痛の仲間だけれど、内耳にある平衡感覚をつかさどる「前庭」という部分と脳の情報のやりとりがうまくいかなくなることで、めまいやふらつき、吐き気が出ると考えられています。三叉神経という神経からの物質の放出も関係している可能性があるんですよ。

◆特徴と症状

Ptどんな人に多いんですか?

頭医30〜40歳代に多く、女性は男性の3〜4倍とされています。めまいの持続時間は5分から3日間と幅広くて、日常生活に支障をきたす中等度から重度のめまいが起こります。

Pt:めまいって、グルグル回る感じですか?

頭医:そうです。回転性のめまいのこともあれば、フワフワと浮いているような感じ、平衡感覚がなくなるようなふらつきとして出ることもあります。他にも、光や音、匂いに過敏になって部屋にこもりたくなる、月経と連動して悪化する、目の前にギザギザの光が見えるなど、片頭痛に似た特徴を伴うこともあります。

◆メニエール病との違い

Pt:それって、耳の病気の「メニエール病」と似てませんか?

頭医:良い質問ですね。確かに症状は似ていますが、違いもあります。前庭性片頭痛は「めまいと頭痛が一緒に起こる」のが特徴です。一方、メニエール病は内耳のリンパ液の異常が原因で、めまいに加えて耳鳴りや難聴、耳の詰まり感が出るんです。頭痛は伴わないことが多いんですね。

Pt:なるほど、耳の症状が強いかどうかがポイントなんですね。

◆診断と検査

Pt前庭性片頭痛って、どうやって診断するんですか?特別な検査があるんですか?

頭医:実は、特定できる特殊な検査は今のところありません。臨床症状や経過を見て診断します。また、片頭痛に効く予防薬を試して、症状が改善することで診断につながることもあります。

診断基準としては、

  • 5回以上のめまい発作(5分〜72時間続く)
  • 片頭痛の既往や家族歴がある
  • 発作の半分以上で頭痛や光過敏・音過敏など片頭痛の症状を伴う
    といった条件を満たすことが必要です。

◆患者さんの困りごと

Pt:でもこれって、頭痛外来と耳鼻科、どっちに行けばいいのかわからなくなりそうですね…。

頭医:そうなんです。頭痛の先生には「めまいのことを話しづらい」、耳鼻科の先生には「頭痛のことを話しづらい」と感じる方が多くて、結果的にどちらからも中途半端に扱われてしまうことがあります。いわゆる「たらい回し」になってしまうんですね。

Pt:それは大変…。

頭医:だからこそ、前庭性片頭痛という診断名が広まってきたことはとても重要なんです。医師がきちんとこの病気を理解して、耳のめまいと頭の片頭痛を一緒に診ていくことが大切なんです。

————————————–

頭痛の駆け込み寺

頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする

●目的:

頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長くても5分程度しか割けない。そこで伝えきれない内容を補える専門医による情報発信の場をつくる。

それにより、わざわざ外来に訪れなくても解決できる内容や、ネット検索して誤った情報を得てしまう方に対して、安心して専門医の話を聞ける場所ともなる。

**

※頭痛専門医とは?

日本頭痛学会が定めた申請資格(医師免許証・頭痛関連学会の専門医・5年以上の研修・頭痛関連疾患に関する発表など)を有し、資格審査および試験により認定された医師。

**

●島田医師プロフィール

《経歴》

平成21年杏林大学 医学部卒業
杏林大学医学部付属病院 脳神経外科入局
都立神経病院
杏林大学医学部付属病院
都立多摩総合医療センター
水戸ブレインハートセンター
東京大学医学部 特別研究員


《学会・専門医》

日本脳神経外科学会 専門医、指導医
日本脳卒中学会 専門医、指導医
日本神経内視鏡学会 専門医
日本頭痛学会 専門医
日本医師会認定産業医

▶YouTube : https://www.youtube.com/@頭痛の駆け込み寺

頭痛の駆け込み寺
YouTube企画 頭痛専門医 島田医師による 「頭痛の駆け込み寺」 ●内容: 頭痛専門医 島田医師がわかりやすく頭痛について解説をする ●目的: 頭痛患者は多く、どの診療科でもよくみられる愁訴に関わらず、頭痛専門医(※)は少ないのが現状である。頭痛専門外来では、1日診られて100名程度、しかも患者1人に付き長...

コメント

タイトルとURLをコピーしました